福井県の美しく静かな夏の海、自然の恵みウニ漁を行う海女
夏の盛りの七月二十一日、福井県越前町ではうに漁が解禁となる。
かつては数十人の海女がそこかしこで漁を行う姿を目にすることができたが、高度成長期以降港の整備拡張が進み漁場となる磯も漁獲量も近年は減少しそれに伴い海女の数も激減してしまった。
越前海岸は流れ込む大きな河川が存在せず、背後に聳える越知山やエボシ山などの山々から流れ出す栄養豊富で綺麗な水が生活環境域を通過することなく海岸に流れ込むため豊かな漁場が現在も守られている。そんな越前町左右地区で江戸時代から続くうに漁を頑なに守り続けている一人の高齢の海女がいます。
たった一人で自然の恵みに感謝しながら一つ一つ丁寧に集められたウニを日がな一日かけてやっとできるのはほんの数百グラムの汐ウニ。しかしその旨味と風味は伝統的製法であるウニの卵巣と塩のみというたった二つの組み合わせから生み出されたとはとても思えない幾重にも重なりあう複雑な味わいだ。後継者も存在せずやがて絶えてしまうであろうこの食文化はその希少性からもより深みのあるものに感じられるだろう。